男性型脱毛症は、前頭部から頭頂部のヘアサイクルが乱れ、成長期が短くなり、十分に成長できていない細くて短い産毛のような髪の毛が増えてくることが特徴となっており、このことを一般的に軟毛化と言います。具体的なヘアサイクルのメカニズムで比べると、正常なヘアサイクルは髪の毛と毛乳頭が完全に離れて毛母細胞での細胞分裂が停止する休止期が約3~4か月で、毛休部にある毛母細胞の分裂から伸び始めて毛が生え始める成長期が約2~6年、毛球が縮小して毛を成長させていた毛母細胞での細胞分裂が減少する退行期が約2週間ですが、男性型脱毛になると、髪の毛の休止期が3~4か月、成長期が数カ月~1年、退行期が2週間ということになり、男性型脱毛になった場合、毛包はとても小さく、小型化しているのが特徴です。

 

薄毛や抜け毛の原因としては、隔世遺伝などの遺伝子型脱毛や、不規則な生活や間違ったシャンプーのやり方など、さまざまな事柄が考えられていますが、最新の研究では、男性型脱毛の原因の9割は、悪玉男性ホルモンのジヒドロテストステロン(以下DHT)にあると言われており、DHTは、テストステロンが不足することによって生まれることがわかっています。また、頭髪の工場と言える毛母細胞と皮脂を分泌して皮膚や毛髪の保湿や保護をする皮脂腺に悪影響を与え、髪の生成を妨げると言われています。このことを理論的に説明すると、テストステロンが体内で不足すると(最近の研究では脳の認知機能をつかさどる海馬の神経シナプス数が減少するという研究結果が報告されており、ストレス耐性や認知機能が低下し、抑うつ症状を引き起こすと考えられています)、不足分を補おうとしたテストステロンが毛母細胞中の酵素である5aリダクターゼと結合し、この結合によって、DHTが生まれます。このDHTが毛母細胞における髪の育成を妨害し、さらに皮脂腺を刺激し、皮脂が過剰に分泌し、その結果、その皮脂が毛穴の古い角質と混ざり合って毛穴を塞ぎ、髪の育成を妨げることになり、結果として髪の毛の軟毛化が多々起きてしまいます。

 

DHTの働きとしては、髪の育成を妨げることや、ひげなどの髪以外の体毛を濃くすること、精力が減退することや、過剰に分泌された場合には前立腺肥大や前立腺がんになる可能性があることなどが現在わかっています。これに対して、テストステロンは、毛根を強くすることや、骨の形成、筋肉の維持や認知機能の老化防止、血管機能の健康維持や、やる気や行動力の増進、性欲の増加や精子の形成や、脂肪蓄積の抑制、抜け毛を防ぐ働きなどがあると考えられており、一般的に男性の髪の毛が女性の髪の毛よりも太いのは、テストステロンの分泌量が多いからだと言われています。因みに、上記の5aリダクターゼとは5α還元酵素とも言われ、薄毛の原因物質の1つでもあり、I 型と II 型の2種類あることがわかっており、5α還元酵素 I 型は皮脂腺に多く存在し、5α還元酵素 II 型は毛乳頭に多く存在していると言われており、薄毛の原因は5α還元酵素 II 型影響がより大きいと考えられています。

 

男性型脱毛症の検査に、アンドロゲン受容体という検査があり、アンドロゲン受容体とは、男性ホルモンのDHTなどを受け取る受容体であり、アンドロゲン受容体遺伝子を鋳型にして合成されると考えられており、この合成率はひとによって個人差があり、ある特定の塩基配列の長さを測定することによって、DHTやアンドロゲンの影響を受けやすいかどうかを調べることが可能となっており、検査内容としては、DNA塩基配列の長さを分析する検査であり、男性ホルモンに関与しているアンドロゲン受容体において特異的に配列しているDNA塩基配列を分析する検査となっています。DNA塩基は4種類の塩基、A(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)から成り立っており、各遺伝子は特有の塩基配列によって構成されていることがわかっています。アンドロゲン受容体遺伝子は6個のエクソン(m-RNAに移し変えられる領域)から成り立っていますが、そのうちの第1エクソンにはDNA塩基配列に個人差が存在しており、この個人差を塩基配列決定法などによって調べることが可能となってます。検査結果は約1か月くらいかかり、この検査結果は個人情報などの関係から、電話での結果報告はできないようになっているので、クリニックで医師からの詳しい説明を受ける必要があります。

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